3. 仕事の原理・原則

誰にでも、どんな仕事にもあてはまる仕事の原理・原則

さて本論では「社長の仕事=新入社員の仕事」、「コピー取り=企画書作成」と考えています。業務革新の定番的な取組である「ビスを3歩持って歩く工程を2歩分は無駄と考え1歩にする」に代表されるBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング≒無駄取り)の手法では到底容認できない考え方だと思います。しかし、本論ではBPR的な取組は工場などの生産現場では成果を出すことを認めますが、間接部門やいわゆるホワイトカラーなどの現場では成果を出すことは困難だと考えています。表面的な仕事、作業は千変万化しています。それをBPRで一々とらえるのは不可能です。それよりも誰にでも、どんな仕事にもあてはまる仕事の原理・原則があると考えて、その体系をとらえるところから着手したのがスマートマネジメントです。

ではその仕事の原理・原則をご紹介しましょう。二つの大きな考え方があります。まずは社長の仕事=新入社員の仕事を証明してみましょう。いわゆる5W1Hで整理してみます。

誰が仕事をやるか?を考えてみます。
ここでのポイントは第三者の仕事を観察するのではなく、自分のやっている仕事を観察してみます。つまり自分がやる仕事を観察して、もう一度「誰がやっている?」を考えると、二つしかないことがわかります。
ひとつは書類作成やパソコン入力などの自分だけでやれる仕事、もうひとつは会議や打ち合わせ、商談、電話など必ず相手がいないと成立しない仕事の二つです。本論では前者を「自分ひとりでやる仕事」、後者を「他人と共同でやる仕事」と呼ぶことにしています。そうするとどんな優秀な社長さんもまったく使えない新入社員でもこの二つの仕事しかしていないという点ではイコールで結ぶことができます。

この事実がわかるとBPRの取組では発見できなかったマネジメント上の新たな発見に結びつけることができます。それはこの二つの仕事への投下時間のバランスが大体どこの会社で調査しても4:6の割合に近づくということです。

また自分ひとりの仕事の割合が3割を切ってくる人にストレス過多の人が増え始めるという相関データも取ることができています。ほかにも多くの有益な情報を「この二つの仕事」から導くことできますが、紙面の都合上、詳細を知りたい方はお問い合わせください。

さてあと五つありますが、表1のように全ての仕事は二つのセットでとらえることができます。社長の仕事と新入社員の仕事を同じ土俵でとらえることができると様々な業務革新の取組のヒントがみえてきます。

「コピー取り=企画書作成」

次に「コピー取り=企画書作成」について考えてみましょう。
これもBPRでは全く別の仕事、プロセスとなりますが、表面的でない背後に隠れている普遍性に目を向けるとイコールで結ぶことができます。たとえば、どんな仕事にも仕事に取りかかる「はじめ」がありますし、同時に仕事が仕上がる「おわり」があります。つまり普遍的な仕事の構成要素として「はじめとおわり」はセットでとらえることができ、この「はじめとおわり」で構成されているのは、その仕事への「投下時間」ということになります。

そしておもしろいことに前節で触れた「自律」と「他律」で考えると、「はじめ」は自律的要素が高く、「おわり」は他律的な要素が高いことがわかります。つまり、コピー取り=企画書作成の背後にある仕事の原理・原則は、自分が主にコントロールする「はじめ」と誰かと共同でコントロールする「おわり」が常にセットになっていることがわかります。ですから上司から「3時までに仕上げてちょうだい」と言われても違和感を持つ人はいないはずですが、「この仕事は3時からやってちょうだい」と言われれば「どうしてですか?」と指示に対する違和感から質問をすることになるでしょう。

つまりここでも自律と他律のバランスが仕事に影響していることがわかります。それで光がプリズムを通過すると7色に分光する(スペクトル)ように、自律と他律のバランスで仕事の構成要素を7つほどあげてみる思考実験をしてみました。以下の7つをどんな仕事にも内在している構成要素としてとらえることにしました。自分がコントロール(自律)する割合が多い順に並べると次のとおりとなります。
1) 投下時間(はじめとおわり)
2) 動機・目的(質と量)
3) 優先順位(目標と実績)
4) 役割分担(責任と権限)
5) 意思疎通(納得と調整)
6) 専門知識(専門と業際)
7) 組織環境(判断と規範)
の7つです。
1)から3)は個人のスキルにかかわる問題、4)と5)はチームのスキルにかかわる問題、6)と7)は組織のスキルにかかわる問題として整理することもできます。
実は、この7つの構成要素に、ほかの要素(各自の積極性や消極性、ストレス、さらにはコミュニケーションスキルなど)を加味した診断手法を開発してあります。セミナーや研修では実施前に参加者に事前に診断を受けてもらい、各自の強み、弱みを把握したうえでトレーニングに参加し、成果の出やすい状況にしています。

また、前述の金融機関では合併の際に、この診断をそれぞれの金融機関で実施して差異を比較検討し、各自のモチベーションを維持しつつ合理的な合併作業と合併後のあるべき業務処理の手法を検討する判断材料として成果を出しました。また、全社で診断を実施すると上司と部下や社員と派遣社員、男性と女性、世代別や部門間の仕事のさばき方の特徴がわかり、生産性を低下させている原因も容易に把握できます。